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MOVIE LOVERS' PLACE

映画の感想などを綴っていきます。

『コーヒーをめぐる冒険』の感想<ネタバレあり>

ドイツの映画『コーヒーをめぐる冒険』の感想です。

 

2012年公開の白黒映画です。

 

監督&脚本はヤン・オーレ・ゲルスターです。

 

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原題は『Oh Boy』です。

 

その名の通り、主人公のニコの踏んだり蹴ったりの日を描いた映画です。

 

教習所で教官に逆ギレされる・・・Oh Boy...

 

メトロで変なカツアゲに遭う・・Oh Boy...

 

久々に再会した元同級生の女性と、いい感じになるも、摂食障害&ヒステリー持ちとわかる・・・Oh Boy...

 

何をしても上手くいかない日ってありますが、それが延々と続く映画です。

 

 

それにも関わらず見た後になぜかほっこりとした気分になる作品です。これかなり不思議です。

 

 

特にお気に入りのシーンは、ニコがメトロで変な男二人組に絡まれるシーンです。

 

1人がリーダー格で、もう1人はスネ夫みたいな男です。なんでも言いなりで繰り返すだけです。

 

ニコはキセルを疑われ、運賃を払うように言われました。

 

そして電話番号を聞かれます。

 

その日は散々嫌なことがあったので、憤慨したニコは、スネ夫に逆ギレします。

 

 

「お前の電話番号はなんだよ?R2D2か?」

 

 

そしてダッシュで逃げます。

 

 

金魚の糞みたいな男に「お前はロボットみたいだ」とバカにしたわけですね。笑いました。

 

 

他にも「タクシードライバー」など、過去の映画作品を引用したセリフがチョコチョコ出てきます。当たり前ですが監督が映画好きなことがよく伝わってくる脚本です。

 

 

映画には二種類あると思います。一つは作品そのものが目的の映画です。もう一つは作品をきっかけにして何かを観客に考えさせることを目的とした作品です。『Oh Boy』は後者ですね。

 

 

延々と嫌なことが続く1日。しかも大抵は対人関係がキッカケのものです。

 

そしてその「嫌なこと」は、普通の映画でよくある超ビッグ級の出来事ではなく、日常あるあるのものばかりです。

 

そう、他人なんて基本「変」なんです。そして「トラブル」なんです。

 

日本でだって職場でのストレスの一位は「対人関係」と言われています。

 

職場の上司や同僚でなくても、家族との間だって嫌なことは起こりえます。

 

 

<ここから先ネタバレあり注意>

 

 

踏んだり蹴ったりのニコの1日ですが、最後に一番大変な出来事が起きます。

 

バーで偶然絡まれた男性(老人)が、心臓発作で倒れてしまいます。

 

 

ニコは必死に救急車を呼び、病院の待合室で夜を明かします。

 

そして残念ながら治療も甲斐なく、翌朝男性は亡くなってしまいます。

 

ナース曰く、男性は親戚や家族などがいないとのこと。また名前を尋ねると、プライバシーの関係でフルネームは言えないが「フレデリック」とだけ教えてくれました。

 

ショックを受けるニコ。そしてカフェでコーヒーを飲みます。これで映画は終わりです。

 

 

人間関係によるトラブルだらけの1日(前日)でしたが、最後に起こった人の死は悲しいものです。そして孤立無援の状態で亡くなるのは辛いものです。

 

 

男性の名前がすごくポピュラーな「フレデリック」であるところからして、これは万人の死に際を表現したものだと思いました。誰しもが死ぬ時は1人です。

 

 

せっかく人生の最後に自分を救おうとしてくれた人にもプライバシーの関係でフルネームを明かせないところに現代人の孤独が効いています。

 

 

そして嫌なことだらけの対人関係だとしても、生きていてそれに悩むこと自体が豊かで美しいことなのですね。人は孤独を愛するし、嫌悪するし、そのアンビバレンスこそが面白いわけです。

 

 

そのことがラストのコーヒーを飲むシーンで表現されていたので、なぜか見終わった後にほっこりしてしまいました。

 

 

トラブルこそ愛せるようになれば一人前。しかも別に愛せなくてもオッケーということですね。

 

 

なかなか面白い映画だったのでオススメです。