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MOVIE LOVERS' PLACE

映画の感想などを綴っていきます。

ベルイマン監督『仮面/Persona』の感想<ネタバレあり>

イングマール・ベルイマン監督の『仮面/Persona』の感想です。

 

この映画は1966年に公開されたスウェーデンの映画です。

 

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ビビ・アンデショーン演じるナースのアルマと、リヴ・ウルマン演じる女優のエリザベートが登場する映画です。二人の女性以外にも登場人物はいますが、ほとんどセリフがなく、ほぼ二人がメインです。

 

 

アルマはしゃべらなくなった女優のエリザベートの看護を任せられます。よくしゃべるアルマに対し、ほとんど喋らないエリザベート。さまざまな点で対照的な二人の女性の交流を通じて人間の持つ二面性に迫ります。

 

 

映画は写真をつむいだカットが連続するシーンではじまります。象徴的な写真が多く、かなりホラー入っています。音楽と相まってかなり怖いです。途中で視聴を辞めようか迷ったほどにホラーでした。。。

 

 

ただ、このシーンは現代映画ではあまり見られない表現技法です。教科書に出てくるような実在する写真(ナチスに連行される子供など)も多様されています。決定的なホラー写真がたくさん出てくる訳ではないのですが、なぜか恐怖を駆り立てます。

 

 

というわけで、この映画をカテゴライズするならば、個人的には「ホラー+ミステリー+ヒューマンドラマ」といった感じになると思いました。

 

 

どんな人にもアンビバレントな感情があると思います。例えば「Aをしたいけど、同時にBもしたい。しかしAとBは同時になし得ない。」などです。日常生活でもこういうことはよくあると思いますが、常に選択を繰り返してなるべく後悔が少なくなる行動をとる方がほとんどだと思います。

 

 

日常生活だけではなく、人類の歴史もアンビバレントそのものです。平和を願う一方で、戦争をする。そして実際に教科書にも載っているナチスに連行されるユダヤ人の少年の写真を用いたカットが何度か入ります。

 

 

自分の民族に対しては愛着を持っていて、優しくする。しかし他民族には排他的になって殺戮をする。よく考えると他民族も同じ人間であり、そこには矛盾がある。これも歴史のアンビバレンスですね。

 

 

ナースの名前である「アルマ」はスペイン語で「魂」という意味です。その名の通りに感情が豊かでよく喋るアルマにもいろいろなアンビバレントな過去がありました。それに対して女優のエリザベートはほとんど喋らず、表情もないのでまるで仮面のようです。

 

 

二つの顔を使い分ける必要は大人ならば誰でもあると思います。二つどころではないことも多々あります。特に女性はそうですよね。人生において、「娘」「恋人」「妻」「母親」などたくさんの「自分」を求められますし、それらのアイデンティティーの使い分けや統合に苦労する人も多いと思います。

 

 

ベルイマンがこの映画を思いついたのが、出演しているビビとリブがストックホルムの街中で話していたときとも言われています。確かに女優が二人で会話していたら色々とイマジネーションが湧く監督もいるかもしれません。

 

 

ベルイマンは少なくとも5回結婚していたりと、中々派手な(?)女性遍歴があったようなので、特に女性に対してもつ確かなイメージがあったのかもしれません。しかしながらイメージが確立し過ぎていると、それを体現できる他人は基本的に存在しないので、理想と現実にギャップが生じます。そして離婚になります。しかしイメージがあるからこそ、また他の誰かと結婚します。想像に過ぎませんが、この繰り返しで5回の結婚になったとしたら、これもまたアンビバレンスですね。

 

 

この映画を通じてベルイマンが言いたかったことですが、個人的には「アンビバレントでいいじゃない」ってことだと思います。

 

 

人間には感情があって、かつ知性もある。だからシチュエーションに応じていろいろな人格を使い分けられる。逆に自分でコントロール仕切れない複雑な感情に自分で驚くこともある。矛盾とわかりきっていても捨てきれない感情があるし、わがままと分かっていても治せない理想もある。

 

 

いわゆる近代的な「神」とは遠い存在に感じられる「人間」だけど、だからこそ感情豊かでバラエティに富んでいて「人間らしい」。そしてそれはギリシャ神話に出てくる神々に通じる。同じベルイマン作品の『夏の夜は三たび微笑む』でも、複雑に入り組んだ男女の人間関係がとても人間らしかったです。

 

 

ベルイマンはそんな人間らしさにこそ『神』が存在していたと考えていたと感じました。そしてそれが面白いと思っていた気がします。