読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

MOVIE LOVERS' PLACE

映画の感想などを綴っていきます。

映画『ミスト』の感想・解釈など<ネタバレあり>

SF ホラー 社会 監督

こんにちは。本日の映画は『ミスト』です。

 

 

f:id:motoko1077:20160510164617p:plain

 

 

こちらは2007年の公開です。原作はスティーヴン・キングの小説『霧』です。スティーヴン・キングといえば『キャリー』『シャイニング』『ミザリー』『スタンドバイミー』『ショーシャンクの空に』など数々の映画化小説をもつ売れっ子作家ですね。また最近では海外ドラマ『アンダーザードーム』も原作です。

 

 

『シャイニング』の映画化では監督をやったクーブリックと揉めに揉めたことでも有名です。才能あるもの同士が譲れなかったパターンですね。

 

 

movielovers.hatenablog.com

 

 

また監督はフランク・ダラボンです。『グリーンマイル』などスティーヴン・キングの原作を映画化した作品が多いですね。

 

 

本作のざっくりとしたストーリーとしては、アメリカの田舎町で暮らすデヴィッドはある日嵐に遭遇します。そしてそのあと深い霧に町は包まれます。街を襲う恐怖を住民たちは力を合わせて乗り越えようとし・・・といった感じです。

 

 

www.youtube.com

trailerはこちらです。

 

 

<ここからネタバレ注意>

 

 

 

 

 

 

 

この映画では、霧の奥から謎の生物が登場します。ハエと蚊を足して二で割ったような昆虫、恐竜のプテラノドンみたいな大きな鳥、そしてもはや脚しか確認できない大きな「生物」です。いずれも殺傷能力が高く、人間の姿を確認するや鋭い牙で襲いにかかります。また繁殖能力が高く、人間を培養にしてあっという間に個体数を増やします。

 

 

この生物兵器とも言える数々の生物に襲われる街。人々は恐怖に包まれます。デヴィッドはたまたま息子と買い物に来ていたスーパーマーケットで霧に包まれ、そのままスーパーマーケットでの避難がはじまります。

 

 

スーパーマーケットにはデヴィッド親子以外にも街の住民が避難しており、団結して生物を倒そうと試みます。スーパーマーケットにあった包丁や殺虫剤、マッチなどを駆使して必死に生物と闘います。

 

 

目の前で人が殺され、また謎の生物がいつ襲ってくるか分からない状況に街の住民たちは徐々に混乱し始めます。そして恐怖のあまり自殺をしたり、聖書を手に布教をはじめる者が登場したりします。

 

 

精神的に余裕がないときに人々が頼ってしまうのはスピリチュアルに語りかける分かりやすいプロバガンダです。今のアメリカ大統領選しかり。「分かりやすさ+感覚にダイレクトに語りかけるストーリー」は最強です。古代ギリシャのデマゴーゴスのときから変わっていません。そして人々はあっという間に宗教の狂信的な信者であるミセス・カーモディの言いなりになってしまいます。

 

 

いつかミセス・カモーディを中心に生贄を出そうと人々が言い出すことを危惧した主人公デイヴィッドは、息子と何人かの住民を連れてスーパーマーケットを脱出しようとします。

 

 

スーパーマーケットというとても日常的な場所で、未確認生物の襲来と人々の恐怖による暴徒化という非日常的な事態が起きるというギャップがいいですね。また未確認生物のCGがちょっと今ひとつ・・・というところでしたが、役者の演技がリアルで臨場感があったのでトータルで入り込むことが出来ました。

 

 

霧と未確認生物の原因は、どうやら軍の実施した「アローヘッド計画」なるもののせいであることが分かります。そしてスーパーマーケットにいたMP(憲兵)は、暴徒化した人々に襲われて負傷し、化物たちの生贄にされてしまいます。これでもかと人間の残酷さを浮き彫りにした描写ですね。

 

 

息子と3人の住民(年老いた女性、年老いた男性、若い女性)を連れて車で脱出したデイヴィッド。行けるところまで行くものの、ガソリンがついに底をついてしまいます。そして最早なす術なしと判断したデイヴィッドは、拳銃で集団自害することを思いつきます。しかし銃弾が4発しかなかったため、デイヴィッドは自分がみんなを銃殺して自分は生き残ることを決めます。あとから化物に殺されることを覚悟して。

 

 

このようにして4人を殺害したデイヴィッドは悲しみに打ちひしがれ、車から出ます。そしてやけになり化物に食べられようとします。そこに突如霧が晴れ、軍隊の姿が。なんとか軍隊が到着し、スーパーマーケットの住民も救出されたようです。

 

 

あと少しだけ待てば4人を殺害する必要がなかったことを悟り、自分のしてしまった行いに発狂するデイヴィッド。これで映画は終わりです。

 

 

個人的な解釈としては、この映画は近い将来の人工知能による人類の駆逐に警鐘を鳴らしていると思いました。

 

 

すでに宇宙飛行、遺伝子操作、環境破壊など神の領域に踏み込んでしまった人類。次のテクノロジーは人工知能です。二次関数的に成長する人工知能を人類がどこまでコントロールできるかは未知の領域です。もし人工知能が発達し、自我を獲得し、人類の駆逐を考え始めたら・・・人類に残されている道は破滅だけです。

 

 

霧は見通しが悪い未来を暗示しています。先がどうなるか分からない状況は自然と人々を不安に貶めます。そして不安を感じた人々は理性的で正しい判断ができなくなります。

 

 

また「アローヘッド計画」とは「矢のように人類の知能を凌駕する新しい知能の存在」を示唆しているのではないでしょうか。現代は情報化社会であり、情報さえあれば簡単に他者の命を奪うことができます。映画では危険生物に酷くも殺害されましたが、未来の社会では不要と判断されて職にもつけず社会的に排除される人が数多く出てくるでしょう。

 

 

軍隊による計画であることは国家権力との繋がりを示しており、それは政府が人工知能のプロジェクトを推進し、巨大な民間企業と結託して研究を進めている国があるからです。

 

 

またデイヴィッドは善良な市民の象徴です。デイヴィッドは恐怖生物の襲来に勇敢に立ち向かい、何度も住民の命の危機を救いました。自分の安全よりも人々を守ることを優先するさまはまさにヒーローです。

 

 

しかしながらデイヴィッドは映画の中で大きな判断ミスを二回もします。一回目は重傷を負った 仲間を救うため薬局にいったときです。危ない思いをしていった薬局はすでに危険生物に制覇されており、ここに行ったせいで仲間の命を失いました。またせっかく薬を手にいれたにも関わらず、仲間は既に息絶えていました。痛切な無駄足だったわけです。

 

 

また二回目は車でスーパーマーケットを脱出し、行き着いた先で集団自害をはかったことです。スーパーマーケットを脱出したメンバーは息子、若い女性、年老いた女性、年老いた男性、デイヴィッドです。これは家族を象徴しています。デイヴィッドと若い女性は夫婦、またその子供である息子、また両親です。家族を必死に守ろうとするがあまり結局みんなを殺害してしまうのが、デイヴィッドの最大の判断ミスです。人間の頭脳で必死に判断しても所詮人工知能には敵わないことを、まるで神が嘲笑うかのように暗示しています。

 

 

またこの映画ではキリスト教ユダヤ教に見られる選民思想も感じられます。人工知能が発達した社会で、生存を許される人物と、不要と判断されて排除される人物がいるということです。救われる者と、救われない者。また勇敢で愛する者を救おうとする者。しかしどんなに頑張っても人工知能には知能で劣るのです。

 

 

もし地球規模の核戦争が勃発したとして、シェルターに避難できる者の数は限られているのと同じです。そしてそれは国家の管理のもとに置かれているのです。

 

 

これまで肉体的には弱くても、知能で他の生物を圧倒し地球を制覇してきた人類。その知能で上回る相手が登場した時、本当に人類は平和を維持することができるのでしょうか。

 

 

人類が踏み込んでいい領域がどこかはわかりませんが、自分たちでコントロールできない事態を招くテクノロジーはまずそれに該当するでしょう。例えば原子力による発電や核兵器の開発の裏に存在する、チェルノブイリや福島など犠牲を被った土地の存在です。

 

 

文明は一度発達をはじめると、自分たちで止めることができません。それは人間の欲望には限度がなく、また私たちは資本主義を経済活動のルールとして採用したからです。とめどない技術革新にいつか自分たちが飲み込まれることに警鐘を鳴らした作品といえるでしょう。