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MOVIE LOVERS' PLACE

映画の感想などを綴っていきます。

ポランスキー監督『水の中のナイフ』の感想など<ネタバレなし>

サスペンス ヨーロッパ 監督

こんばんは。だんだん夏のような気候の日が増えていますね^^

 

 

本日の映画は『水の中のナイフ』です。

 

 

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公開は1962年で、ポーランドの映画です。監督はポランスキーです。

 

 

ポランスキーポーランド人の両親のもとにフランスのパリで産まれました。父親がユダヤ教徒であったため、第二次世界大戦時はユダヤ教徒迫害のために大変な経験をします。そして母親はカトリック教徒であったにも関わらず殺害されてしまいます。

 

 

たまたま生まれたのが1930年代であったために、そしてたまたま父親がユダヤ人であったために、ポランスキーは大変な思いをしなければならなかったと思うと胸が痛みます。

 

 

そしてその経験が映画監督ロマン・ポランスキーに数多くの示唆深い作品を作らせることへとつながっていきます。

 

 

のちに発表する『戦場のピアニスト』などはまさにユダヤ人の男性がヒトラー政権下のユダヤ人迫害から逃れるストーリーですね。

 

 

ヒトラーを擁護するつもりは全くありませんが、歴史が映画に与える影響はありますよね。チャップリンヒトラーがいなかったらもっと違った作品を作っていたかもしれません。

 

 

movielovers.hatenablog.com

 

 

またそれ以外にも世界大戦や宗教戦争をテーマにした映画作品は枚挙に暇がありません。

 

 

歴史は複雑に相互関連していることの証でもありますね。

 

 

さて、『水の中のナイフ』はポランスキー初の監督作品と言われています。この映画が公開されたとき彼は29歳でした。

 

 

セイリングに向かうためにドライビング中の夫婦の目前に若い男性が現れます。男性が突然現れたため夫婦はあやうく男性をひきそうになります。

 

 

そして夫婦はそのまま男性を車にのせ、三人は一緒にボートでセイリングに出ます。

 

 

もうこの展開からして最高です。

 

 

普通いきなり飛び出してきた見知らぬ人を車にのせて、まして夫婦水入らずのバケーションに連れていかないじゃないですか。観客はその展開に早くも「?」ですよね。

 

 

さらにはなぜ夫婦が男性を連れていったのが明確な説明が映画の中ではされません。示唆はされますが。

 

 

いかにも60年代のミステリー映画の展開って感じでワクワクします。説明があまりされないのもいいですね。イマジネーションが刺激されます。

 

 

現代映画って謎を明確に説明しすぎる傾向があるので、これくらい煙に巻かれている方が個人的には好みです。

 

 

そして、美人妻を巡って夫と若い男性の間で見えないライバル争いが繰り広げられます。セイリングの技術一つをとっても夫は男性の優位に立とうとします。

 

 

経験豊富で経済的にも安定している夫。知識は足りず、経済的にもまだまだこれからの若い男性。ただし妻にとってセクシャリティーは若い男性が勝っています。

 

 

海の上でボートで過ごす以上、陸の上のように生命の安全は担保されていません。いつ海に投げ出されたり、ボートが遭難したりするか分かりません。そのような状況の中で三人は力を合わせて船旅を続けます。

 

 

また船の上ということもあり、夫婦は水着、若い男性はズボンのみという服装です。男性と女性の違い、また若い男性と夫の違いが絵でもって浮き彫りになっています。

 

 

本能的に人間が危険を感じる場所で、男女三人が過ごす船の上の時間。人間の本質に迫るには十分すぎるシチュエーションです。

 

 

繊細なバランスを保っている三人の人間関係は、ある意味一触即発の状態です。そしてそれを何度も壊しそうになる小道具が若い男性が持ち込んだナイフです。タイトルの由来にもなっていますね。

 

 

ナイフは男性の象徴です。また権力の象徴でもあります。ピストルに似ていますね。それを持って武力を行使すればあっという間にその場のパワーオブバランスが変わります。

 

 

知識や経済力で勝るものの、若さで劣ることを本能的にわかっている夫は何度も若い男性からナイフを奪おうとします。それは妻を渡さないという意思表示とほぼ同じです。

 

 

これだけの「水面下」の争いと微細な人間関係をシンプルなシーン構成で表現したあたりがさすがです。過激な描写や音楽はほとんどないにも関わらず、きちんとミステリーとして成立しています。

 

 

閉鎖空間で登場人物も限られている映画といえばポランスキーの『おとなのけんか』も本作に似ていますね。こういうテイストが得意な監督なのかもしれません。

 

 

movielovers.hatenablog.com

 

 

三人の行方はどうなるのか。気になった方はぜひチェックしてみてくださいね。