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MOVIE LOVERS' PLACE

映画の感想などを綴っていきます。

アキ・カウリスマキ監督『マッチ工場の少女』の感想など<途中からネタバレあり!注意>

こんにちは。東京は風はあるもののあったかくて日差しも強めの日ですね。思わず半袖着てきたもとこです。

 

 

さてさて、本日ご紹介したいのではカウリスマキ監督の『マッチ工場の少女』という映画です。公開は1990年。68分と短めの作品です。

 

 

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こちらの主演はカティ・オウティネンさん。世界で一番カウリスマキの世界観を体現するのがうまい女優さんですね。彼の作品に多数出演されています。淡々としているのに、溢れるばかりの感情を表現する演技が特徴的です。

 

 

さてこちらの映画ですが、あるマッチ工場で働く女性が主人公です。少女と呼ぶには大人ですね。20歳くらいでしょうか。

 

 

あまり容姿に恵まれず、男性にモテない主人公が、ある日バーで知り合った男性とワンナイトラブからの恋に落ち・・・

 

 

というストーリーです。

 

 

ここで大きくツッコミたいのが、「あまり容姿に恵まれない主人公」という設定の部分ですね。

 

 

いやいや、普通に可愛いから。小顔で8頭身でシュッとしててブロンドで瞳がパッチリしてて・・・美少女じゃん!

 

 

つくづく人種によって美の基準がこうも違うとは驚きます。美の基準って「いかに希少か」という部分が序列の頂点に押し上げる要素があるのは否めないので、アジア人の基準としては美人でも、北欧人からしたら普通となってしまうのでしょうか?

 

 

と思いきやアジア人の美人が北欧で美人と定義されないことも多々あるので面白いですね。

 

 

「とりあえず、日本きたら?モデルかタレントでデビューして幸せな人生遅れるから。」と言ってあげたくなるような主人公です。

 

 

 

 

<ここからネタバレあります!!注意>

 

 

 

 

この主人公の女性ですが、バーで出会ってワンナイトラブした男性と本気の恋に落ちます。しかし相手の男性にはまったくそんな気はなく、むしろ割り切った関係だと思っていました。ワンナイトラブの翌朝に主人公の女性にお金を置いていきます。

 

 

女性は純粋に男性のことを本気で好きになってしまいます。そして神様はなんと冷酷なのか、妊娠までしてしまいます。

 

 

きっと赤ちゃんの存在を告げれば喜んでくれるに違いないと思い男性に手紙を書く健気な主人公。返信で中絶費用を送りつける冷酷極まりない男性。

 

 

そして思い悩んだ末に主人公は男性や義理の両親を毒殺するわけです。ついでにバーで知り合ったよくわからん男性も一緒に。

 

 

これは少し意外な展開ですね。女性って命を生み育む性なので、普通はあまり他殺という発想にならないじゃないですか。自分を責めることはあるかもしれませんが。それがこの映画の面白いところです。

 

 

主人公は、きっとみんなを殺した後に自分も死ぬつもりだったんだと思います。

 

 

薬局でねずみ駆除剤を購入する前に、部屋でタバコを吸う瞬間。これが決意のときですね。普通妊娠している女性って赤ちゃんの健康のためにタバコは控えます。いずれ死ぬつもりでいる諦観が伝わってきます。

 

 

そのあともちょこちょこ喫煙したり、お酒を飲んだりと、いずれ死ぬつもりの命に対して投げやりになる主人公。そして自分を傷つけた男性、義理の両親を毒殺します。バーの男性の殺害のついで感と適当な犯行にはギャグセンスすら感じました。すべての男性に対する憎悪の表現ですね。

 

 

ここで主人公の複雑な感情をうまく表現しているのが、死にたいけど生きたい(赤ちゃんを育てたい)という部分の描写ですね。人生や他人に絶望しつつも、お腹の中の新しい命に微かな希望も感じているわけです。そのちょっとした無意識が、彼女のずさんな犯罪とそれによる警察からの逮捕へとつながっていきます。投げやりになりつつ、社会への恨みを自分なりに表現したのが一連のずさんな犯行。そしてその裏にはどこかで逮捕して欲しいという気持ちもある。

 

 

そして逮捕されたことにより命がつながった。なのでこの映画はハッピーエンドと言っていいと個人的には思います。裁判では彼女の境遇に対して情状酌量があるかもしれませんし、刑務所で出産をすることも出来ます。出所してから人生をやり直すこともできる年齢です。

 

 

これだけの複雑な感情をあのポーカーフェイスで全て表現し尽くしたあたりがさすがカティ・オウティネンです。

 

 

またカウリスマキ作品全般に共通するテーマを感じることができる作品でもあります。なんだかんだ希望を失わず懸命に生きる登場人物に心が打たれますね。とても染みる作品でした。