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MOVIE LOVERS' PLACE

映画の感想などを綴っていきます。

ポランスキー監督『おとなのけんか』の上映時間80分は長い人には長いし、短い人には短い。<ネタバレあり>

ポランスキー監督『おとなのけんか』の感想です。原題の方は"Carnage"で、意味は「虐殺」です。また公開は2011年です。

 

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監督はロマン・ポランスキーです。ポランスキーといえば『チャイナタウン』や『戦場のピアニスト』など数々の名作を残している映画監督ですね。

 

ポランスキーって、まず自分の生涯がかなり壮絶でドラマに満ちていると思うんですよね。それが映画製作に影響を与えていることは間違いないです。いっそ彼の半生を映画化してほしいと常々思います。

 

 

ロマン・ポランスキー - Wikipedia

wikipediaより

 

 

この映画のストーリーは、息子同士の喧嘩の和解をはかるべく、二組の夫婦が片方の家を訪れるところからはじまります。

 

www.youtube.com

trailerはこちらです。

 

この映画のキャスト、かなり豪華です。

 

ペネロピ役:ジョディ・フォスター

ナンシー役:ケイト・ウィンスレット

アラン役:クリストフ・ヴァルツ

マイケル役:ジョン・C・ライリー

 

全員演技派の役者たちですね。ジョディフォスターはいうまでもありませんし、ケイトウィンスレットも『とらわれて夏』の未亡人役などが見事でした。

 

 

 

<ここから先ネタバレ注意です>

 

 

 

 

 

 

 

なぜこの映画はここまで演技派にこだわったキャスティングだったのか。それはこの映画のストーリーが、『12人の怒れる男』のように、ほぼ一室で繰り広げられる大人4人の会話で成り立っているからです。しかも『12人の怒れる男』のようなミステリー謎解き要素もありません。必然的に演技力のない役者では映像がもちません。

 

 

まず思うことは、なんでナンシーとアランはさっさと家に帰らなかったの?だと思います。「大人」は普通トラブルになりそうな雲行きになったら、まっさきにその場を離れます。「家のこと」「仕事」とかいくらでも理油はつけられますし。ナンシーとアランは何度も帰ろうとしてもやはり戻り、結局最後までいてしまうんですよね。

 

 

4人は映画の冒頭では良識ある風に取り繕いながら表面的な平和を装います。大人の常識ですね。ですが、子供のこととなるとカッとなるのが親の心情、息子たちのけんかについて話し合う内に徐々に本音と本性がどんどん出てきます。

 

 

完璧な人間なんて一人もいないことはいうまでもありませんが、4人にもそれぞれ欠点があります。ペネロピは、いわゆる委員長タイプで偽善者ぶるところがあり、また自分がいつも正しいと思いがちです。ナンシーは感情が激昂しやすいです。アランは無関心で自己中心的。マイケルは想像力が足りておらず、ときに残酷な一面も見せます。

 

 

常識、考え方、価値観などは人によって全然違いますね。大人になってくると、価値観の相違はそれだけでお互いを傷つけ合う武器になってしまうのです。みんな自己の存在意義が掛かっているので必死です。まさに「虐殺」に等しいです。

 

 

宗教戦争なんかも元をたどればこうした理由ですね。とくに一神教の場合、相手の信じる神と自分たちのが異なる場合、存在そのものが脅威となります。大人になればなるほど価値観の相違の威力を知っているので、自己保身のためにも子供みたいな喧嘩はしなくなるわけです。ポランスキー自身もユダヤ人として第二次世界大戦ナチスに連行されているので、このことは誰よりも知っているはずです。

 

 

では、ナンシーとアランはなぜ帰らなかったのか。それは帰りたくなかったからです。普段取り繕っているからこそ、子供のように素を出してはしゃぐことが楽しかったのです。つまりこの映画の本当のテーマは「大人の喧嘩」ではなく「大人の遊び」ですね。

 

 

楽しんでいることを認めてしまうと大人としてのプライドが傷付くので「今日は人生最悪の日だ」なんていって何度も帰ろうとするのに結局残るわけです。邦題のタイトルが全部ひらがなだったのもこの辺が理由だと思います。個人的にはこの邦題は原題よりも好きです。

 

 

大人同士の喧嘩って自己の存在意義のために価値観をぶつけあっているだけで、基本的には大げさだし心配しすぎなんですよね。そのことは逃したハムスターが実は公園で生きていたことや、ラストの公園で子供たちが楽しく遊んでいるシーンなどで描写されています。あんなに心配していたハムスターは生きていた。

 

 

またラストシーンで、定点カメラが公園を写しているのですが、子供たちは遊んでいるのに大人たちはそれぞれ犬の散歩をしたり座っていたりしてお互いに遊びません。じゃあ大人たちにも遊ばせてやるか、と思ってポランスキーはこの映画を作った気がします。

 

 

強いていうならば、ちょっと役者たちの演技が大げさすぎたのと、喧嘩のシーンが間延びしていた気がします。もうちょっとアップテンポのある脚本にした方が役者も演じやすかったのでは。

 

 

この映画の上映時間は80分です。途中でテーマに気づいた方には長く感じたことでしょう。気付かなかった方には、80分では短かったかもしれません。また映画の終わり方が謎でモヤモヤしたと思います。