読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

MOVIE LOVERS' PLACE

映画の感想などを綴っていきます。

映画『エクスペリメント』はエイドリアン・ブロディのムダ使い?<ネタバレ注意>

映画『エクスペリメント』の感想です。

 

f:id:motoko1077:20160719161738p:plain

 

 

公開は2010年で、主演はエイドリアン・ブロディです。

ぶっちゃけると彼が主演なのでこの映画を観てみました。

 

 

エイドリアン・ブロディといえば『戦場のピアニスト』の主演ですね!

雰囲気がものすごくある俳優さんです。

 

www.youtube.com

 

戦場のピアニスト』でアカデミー主演男優賞を撮った時のスピーチが感動的で今でも覚えています。

 

さて、『エクスペリメント』はタイトルの通り実際にスタンフォード大学で行われた心理学の実験を元にした映画です。

 

スタンフォード監獄実験 - Wikipedia

 

 

あるグループを看守と受刑者に分けて、観察を続けると、人はその役割になりきってしまうという内容の実験らしいです。

 

実験の結果

 

権力への服従
強い権力を与えられた人間と力を持たない人間が、狭い空間で常に一緒にいると、次第に理性の歯止めが利かなくなり、暴走してしまう。
非個人化
しかも、元々の性格とは関係なく、役割を与えられただけでそのような状態に陥ってしまう。

 - wikipediaより

 

作品の中でもエイドリアン・ブロディは受刑者役としていじめられまくります。

 

戦場のピアニスト』しかり、逆境で芯の強さを発揮して耐え抜く役がすごく似合う俳優さんです。

 

彼をメインでいじめる看守役はフォレスト・ウィテカーです。『パニック・ルーム』で強盗役をやった方ですね。

 

いじめ役がすごくハマっていらっしゃいます(´Д` )

 

ちなみに主人公の彼女役をやったマギー・グレイスとは『96時間』でも共演していますね!マギーグレイスはキム役でした。と言っても一緒に写っているシーンは本作ではありません。

 

 

二人の演技は良かったとして、映画のストーリーは、うーんって感じでした。

 

もともとの実験がありきというのもあるかもしれませんが、展開が急すぎるというか。結局バリスというもともと倒錯していた人物が、環境のせいで凶悪化しただけに見えたんですよね。

 

 

実験の結論を大切にするなら、もっと徐々に普通の人たちが集団心理で変化していく様子を描いた方が良かったのではないかと思いました。

 

 

初日はみんなで自己紹介とかして、「ははは、変な実験に参加しちゃったなー。リアルな制服まで着ちゃって変な感じだぜ。みんなで仲良く二週間切り抜けて報酬ゲットしようぜ!」みたいな仲良くしつつも恥じらいがある感じで始まって欲しかったです。

 

 

実際には初日からもうおかしい人がいたので。

 

 

二日目、三日目と経つうちに段々普通の市民が役にはまり込んでしまう様子を描かないと、実験の趣旨と異なるのでは、と思いました。

 

 

エイドリアン・ブロディがいたから雰囲気のある作品になんとか仕上がっていますが、もし違う俳優だったらただのいじめ系B級作品になっていたでしょう。

 

 

この作品をエイドリアン・ブロディの無駄使いととるか、それとも彼になんとか助けられているととるか。もしくはいじめられるエイドリアン・ブロディを見たかったと思うか。それは観る側の判断に委ねられそうです。

『マシニスト』の感想<ネタバレ注意>

最近バタバタしてて更新が遅れましたが、映画『マシニスト』の感想です。

 

f:id:motoko1077:20160718183043p:plain

 

主演はクリスチャン・ベールですo(`ω´ )o

 

『バッドマンビギンズ』が有名な俳優さんですね。最近では『マネーショート』でアカデミー賞ゴールデングローブ賞にノミネートされました。

 

クリスチャン・ベール - Wikipedia

 

 

マシニスト』は2004年公開の映画です。

 

タイトルは日本語だと『ある機械工』。

 

一年間不眠症だという機械工、レズニックを主人公にしたサスペンスです。

 

何がすごいってクリスチャン・ベールの役作りがすごいですよね。不眠症の主人公を演じるためにガリガリになるまでウェイトコントロールしてます。

 

これは『ダラスバイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒーと『モンスター』のシャーリーズ・セロンに並ぶ衝撃でした。

 

しかもその翌年には『バッドマンビギンズ』に出てるので、本当身体どうなってるんでしょ。

 

さて、主人公レズニックはしばらく不眠症に悩まされていました。

 

その理由は、1年前に起こしてしまったひき逃げ事件です。

 

少年をひいてしまった罪悪感から彼は不眠症でガリガリにやせ細り、アイバンという存在しないはずの男性が見えるようになっていました。

 

 

彼の罪悪感が読み取れるのはこの辺です。

 

・漂白剤オタクでいつも家の掃除をしている。家賃とか電気代は滞納するのに漂白剤だけはちゃんと切らさず買う→罪を洗い流したいという意識

・事故を起こした車(赤色)を廃車にして白い車を購入→無罪の象徴である白色への憧れ

・冷蔵庫に貼られた不気味なノート→書いたのはレズニック本人。"----er"とか"--ller"という文字列と、吊り下げられている人の絵が描かれている。普通なら"murder"とか"killer"と連想するところだけど、レズニックはちょっと外して"mother"とか"miller"と穴埋めする。罪の意識を感じている自分と、それを無意識に避けようとする自分の二人がいた

・アイバンという男性→レズニックの愛読書はドストエフスキーの『白痴』。その中にエパンチン将軍という登場人物がいるが、そのキャラの名前はイワン。英語読みするとアイバンである

・轢いてしまった少年の母親とデートする妄想→シングルマザーとその息子を支える存在になることで罪の意識を消そうとする。実際に会っていたのは娼婦をやってる別の女性

・映画のラストシーンでアイバンが自白をした日に着ていたシャツは"Justice Brothers"。また車のイラスト。自白することでやっと正義を果たせたと安心し、眠ることができるように

 

ちょこちょこメッセージが込められていたのが面白いと同時に、いかにもなシーンは本筋に実は関係ありません、みたいなボケが良かったです。

 

例えばレズニックの家の冷蔵庫から血が溢れ出すシーンがあって怖すぎたのですが、実は電気代払ってなくて止められて、冷蔵庫の中の魚が腐っただけでした。すごく紛らわしい!

 

はじめホラーかな〜?と思いながら見ていたら、サスペンスだったので、最後まで飽きずに見れました。

 

作風だと思うのですが全体的に画面が暗いのですが、登場人物の顔はクリアに写してあったので見やすかったです。どれとは言わないが雰囲気出すためにやたら画面を暗くする邦画にも見習っていただきたいです。顔はちゃんと見たいのです!

 

これを機にクリスチャン・ベールの出ている作品をもっと見てみようと思いました。

『コーヒーをめぐる冒険』の感想<ネタバレあり>

ドイツの映画『コーヒーをめぐる冒険』の感想です。

 

2012年公開の白黒映画です。

 

監督&脚本はヤン・オーレ・ゲルスターです。

 

f:id:motoko1077:20160615132635p:plain

 

 

原題は『Oh Boy』です。

 

その名の通り、主人公のニコの踏んだり蹴ったりの日を描いた映画です。

 

教習所で教官に逆ギレされる・・・Oh Boy...

 

メトロで変なカツアゲに遭う・・Oh Boy...

 

久々に再会した元同級生の女性と、いい感じになるも、摂食障害&ヒステリー持ちとわかる・・・Oh Boy...

 

何をしても上手くいかない日ってありますが、それが延々と続く映画です。

 

 

それにも関わらず見た後になぜかほっこりとした気分になる作品です。これかなり不思議です。

 

 

特にお気に入りのシーンは、ニコがメトロで変な男二人組に絡まれるシーンです。

 

1人がリーダー格で、もう1人はスネ夫みたいな男です。なんでも言いなりで繰り返すだけです。

 

ニコはキセルを疑われ、運賃を払うように言われました。

 

そして電話番号を聞かれます。

 

その日は散々嫌なことがあったので、憤慨したニコは、スネ夫に逆ギレします。

 

 

「お前の電話番号はなんだよ?R2D2か?」

 

 

そしてダッシュで逃げます。

 

 

金魚の糞みたいな男に「お前はロボットみたいだ」とバカにしたわけですね。笑いました。

 

 

他にも「タクシードライバー」など、過去の映画作品を引用したセリフがチョコチョコ出てきます。当たり前ですが監督が映画好きなことがよく伝わってくる脚本です。

 

 

映画には二種類あると思います。一つは作品そのものが目的の映画です。もう一つは作品をきっかけにして何かを観客に考えさせることを目的とした作品です。『Oh Boy』は後者ですね。

 

 

延々と嫌なことが続く1日。しかも大抵は対人関係がキッカケのものです。

 

そしてその「嫌なこと」は、普通の映画でよくある超ビッグ級の出来事ではなく、日常あるあるのものばかりです。

 

そう、他人なんて基本「変」なんです。そして「トラブル」なんです。

 

日本でだって職場でのストレスの一位は「対人関係」と言われています。

 

職場の上司や同僚でなくても、家族との間だって嫌なことは起こりえます。

 

 

<ここから先ネタバレあり注意>

 

 

踏んだり蹴ったりのニコの1日ですが、最後に一番大変な出来事が起きます。

 

バーで偶然絡まれた男性(老人)が、心臓発作で倒れてしまいます。

 

 

ニコは必死に救急車を呼び、病院の待合室で夜を明かします。

 

そして残念ながら治療も甲斐なく、翌朝男性は亡くなってしまいます。

 

ナース曰く、男性は親戚や家族などがいないとのこと。また名前を尋ねると、プライバシーの関係でフルネームは言えないが「フレデリック」とだけ教えてくれました。

 

ショックを受けるニコ。そしてカフェでコーヒーを飲みます。これで映画は終わりです。

 

 

人間関係によるトラブルだらけの1日(前日)でしたが、最後に起こった人の死は悲しいものです。そして孤立無援の状態で亡くなるのは辛いものです。

 

 

男性の名前がすごくポピュラーな「フレデリック」であるところからして、これは万人の死に際を表現したものだと思いました。誰しもが死ぬ時は1人です。

 

 

せっかく人生の最後に自分を救おうとしてくれた人にもプライバシーの関係でフルネームを明かせないところに現代人の孤独が効いています。

 

 

そして嫌なことだらけの対人関係だとしても、生きていてそれに悩むこと自体が豊かで美しいことなのですね。人は孤独を愛するし、嫌悪するし、そのアンビバレンスこそが面白いわけです。

 

 

そのことがラストのコーヒーを飲むシーンで表現されていたので、なぜか見終わった後にほっこりしてしまいました。

 

 

トラブルこそ愛せるようになれば一人前。しかも別に愛せなくてもオッケーということですね。

 

 

なかなか面白い映画だったのでオススメです。

<雑談>マット・デイモンのスピーチ@MIT2016年卒業式の内容・感想

最近、講義をオンラインで公開している大学が世界で増えていますね。

 

アメリカの有名大の一つであるMITが公開しているコースでも、いろいろな動画が見れます。

 

先日MITの2016年の卒業式で、俳優のマット・デイモンが卒業生に対して行ったスピーチが素晴らしかったので、映画ではありませんがご紹介します。

 

f:id:motoko1077:20160609112551p:plain

 

 

news.mit.edu

 

動画に日本語の字幕がなかったので、内容を簡単にサマリーしました。

 

 

<スピーチの要点>

 

・マットデイモンは以前ハーバード大学に通ってたけど、映画の仕事があって卒業しなかった。なので本日のスピーチが僕にとって二度目の"fake graduation"である

・彼はボストンで育ったので、地元にあるMITは小さな頃から憧れだったし、それがもとで友人のベン・アフレックとともに映画「グッド・ウィル・ハンティング」を撮った

・基本的に私たちの行動が全ての結果を左右すると思っている

・世界には解決するべき問題が沢山ある。移民問題、貧困問題、人種差別問題、政治問題など。僕たちは25年後のEUがどのような姿になっているかすら想像がつかない

・メディアは相変わらず煽動ばかりだし、政治家は重要な問題を先送りしてばかりだ

・銀行システムは人々からお金を盗み、数多くの不正が世界にあることを知っている

・それにお金がたくさんあっても決して僕はそれをリスペクトしない

・「正義」というものが本当に実在するかは疑わしいけれど、問題にキチンと向き合うことが大切だ

・今日は3つの大切なことを君たちに伝えたい

・一つ目は"Turn towards the problems that you see and engage with them." 問題から目を背けてはいけないということだ

ザンビア南アフリカで、貧困やレイプ、教育を受けられない女性たちをたくさん目の当たりにした。それでも彼女たちは尊厳を失わず、前向きだった

・僕たちには当たり前の綺麗な水とトイレがない人が世界中に沢山いる

・そして僕はそこに行ったからこそ、そういう経験ができた。それが大切だ

・二つ目に大切なことは、失敗を恐れないことだ

ベン・アフレックと僕も昔はよく失敗したものだ。彼はよく「僕の悪いアイデアの欠点では無く、良いアイデアの優れた点で僕を判断して欲しい」と言っていた

・(MITの学生に対して)どんなに頭がよくても全ての答えを知っているわけではないし、それでいい。それがチャンスに繋がるのだから

・学ぶことは一生続くし、そこに終わりがないはずだ。例えばいろいろな大学のオンラインコースやTEDにアクセスしてみて欲しい。トランプ大学だって構わないよ

・そして他者の意見を常に聞くことだ。オバマ大統領も「100%正しくても民主主義には妥協が必要な時もある」と言っていた

・三つ目の、全ての問題に科学的な解決策がある訳ではない。科学だけでは解決できないこともある

・今日、この場に居合わせたことに感謝。ここからあなたの世界をベターにするための第一歩が始まるのです

 

 

さすが俳優だけあってスピーチうまいです。ジョークで笑いも取りつつ大切なことを言うって感じですね。

 

 

なんかテキストに起こしたら味気なくなってしまったので、ぜひ動画もご覧になってみて欲しいです。

 

アメリカは多様な人々が暮らしていて、まとまりが付きづらいところもありますが、政治に興味がある人が多いのがいいですね。レオナルド・ディカプリオも環境問題などに熱心で活動を積極的にしています。

 

やっぱり有名人がそういう姿勢を見せることって改めて大切なんだな〜と思いました。日本の俳優も大学でスピーチとかやればいいのに。

ドキュメンタリー『ロマン・ポランスキー初めての告白』の感想<ネタバレなし>

ロマン・ポランスキー 初めての告白』の感想です。

 

2012年公開の映画で、映画監督ポランスキーの半生を振り返ったドキュメンタリーです。

 

 

f:id:motoko1077:20160608094027p:plain

 

 

以前ブログの記事で、ポランスキーの半生こそ波乱万丈だから映画化して欲しいと書きました。

 

 

movielovers.hatenablog.com

 

 

 

そしたらあったんですね!!ドキュメンタリーなので完全な映画ではありませんが。

 

 

これはポランスキーが古くからの友人との一対一の対話で自身の半生を振り返るという内容です。

 

 

ロマン・ポランスキー - Wikipedia

 

 

彼の半生はwikipediにあるように、ナチスドイツからの連行、女優の妻が殺人事件に巻き込まれる、未成年との淫行による逮捕などいろいろありました。大切な人を戦争や事件で失いました。またマスコミによる過激な追撃などについても語っています。

 

 

これはプライベートの方ですね。

 

映画監督としては『チャイナタウン』『戦場のピアニスト』などたくさんの名作を作り上げ、数々の国際的な賞を受賞しました。

 

 

多分普通の人の100倍くらい良いことも辛いこともあった人生だったんだと思います。

 

ドキュメンタリーを見た後、自分の今までの人生がすごく平坦に感じました。

 

 

それくらいに色々なことがあったポランスキーですが、だからこそ経験が映画製作に活きています。

 

 

「そして、波乱万丈な人生と平坦な人生のどちらがいいのかは未だに分からない。しかし全ては運命であらかじめ決まっていたように感じる。」と語っています。

 

 

つまり辛いことがあったからこその映画だし、逆に映画があったからこそ辛いことが乗り越えられたと思っているのですね。そして色々なことがあった自分の人生を運命として受け入れているわけです。

 

 

「俺はコップ半分の水の、水がある方しか見ない」とも語っています。

 

 

彼の考え方が伺える言葉です。

 

どんなに辛いことがあってもポランスキーを思い出せば大したことないように思えてきます。また色々なことがあるからこそ人生は面白いと教えてくれます。

 

 

ポランスキーのファンじゃなくてもオススメのドキュメンタリーです。

ベルイマン監督『仮面/Persona』の感想<ネタバレあり>

イングマール・ベルイマン監督の『仮面/Persona』の感想です。

 

この映画は1966年に公開されたスウェーデンの映画です。

 

f:id:motoko1077:20160603141310p:plain

 

ビビ・アンデショーン演じるナースのアルマと、リヴ・ウルマン演じる女優のエリザベートが登場する映画です。二人の女性以外にも登場人物はいますが、ほとんどセリフがなく、ほぼ二人がメインです。

 

 

アルマはしゃべらなくなった女優のエリザベートの看護を任せられます。よくしゃべるアルマに対し、ほとんど喋らないエリザベート。さまざまな点で対照的な二人の女性の交流を通じて人間の持つ二面性に迫ります。

 

 

映画は写真をつむいだカットが連続するシーンではじまります。象徴的な写真が多く、かなりホラー入っています。音楽と相まってかなり怖いです。途中で視聴を辞めようか迷ったほどにホラーでした。。。

 

 

ただ、このシーンは現代映画ではあまり見られない表現技法です。教科書に出てくるような実在する写真(ナチスに連行される子供など)も多様されています。決定的なホラー写真がたくさん出てくる訳ではないのですが、なぜか恐怖を駆り立てます。

 

 

というわけで、この映画をカテゴライズするならば、個人的には「ホラー+ミステリー+ヒューマンドラマ」といった感じになると思いました。

 

 

どんな人にもアンビバレントな感情があると思います。例えば「Aをしたいけど、同時にBもしたい。しかしAとBは同時になし得ない。」などです。日常生活でもこういうことはよくあると思いますが、常に選択を繰り返してなるべく後悔が少なくなる行動をとる方がほとんどだと思います。

 

 

日常生活だけではなく、人類の歴史もアンビバレントそのものです。平和を願う一方で、戦争をする。そして実際に教科書にも載っているナチスに連行されるユダヤ人の少年の写真を用いたカットが何度か入ります。

 

 

自分の民族に対しては愛着を持っていて、優しくする。しかし他民族には排他的になって殺戮をする。よく考えると他民族も同じ人間であり、そこには矛盾がある。これも歴史のアンビバレンスですね。

 

 

ナースの名前である「アルマ」はスペイン語で「魂」という意味です。その名の通りに感情が豊かでよく喋るアルマにもいろいろなアンビバレントな過去がありました。それに対して女優のエリザベートはほとんど喋らず、表情もないのでまるで仮面のようです。

 

 

二つの顔を使い分ける必要は大人ならば誰でもあると思います。二つどころではないことも多々あります。特に女性はそうですよね。人生において、「娘」「恋人」「妻」「母親」などたくさんの「自分」を求められますし、それらのアイデンティティーの使い分けや統合に苦労する人も多いと思います。

 

 

ベルイマンがこの映画を思いついたのが、出演しているビビとリブがストックホルムの街中で話していたときとも言われています。確かに女優が二人で会話していたら色々とイマジネーションが湧く監督もいるかもしれません。

 

 

ベルイマンは少なくとも5回結婚していたりと、中々派手な(?)女性遍歴があったようなので、特に女性に対してもつ確かなイメージがあったのかもしれません。しかしながらイメージが確立し過ぎていると、それを体現できる他人は基本的に存在しないので、理想と現実にギャップが生じます。そして離婚になります。しかしイメージがあるからこそ、また他の誰かと結婚します。想像に過ぎませんが、この繰り返しで5回の結婚になったとしたら、これもまたアンビバレンスですね。

 

 

この映画を通じてベルイマンが言いたかったことですが、個人的には「アンビバレントでいいじゃない」ってことだと思います。

 

 

人間には感情があって、かつ知性もある。だからシチュエーションに応じていろいろな人格を使い分けられる。逆に自分でコントロール仕切れない複雑な感情に自分で驚くこともある。矛盾とわかりきっていても捨てきれない感情があるし、わがままと分かっていても治せない理想もある。

 

 

いわゆる近代的な「神」とは遠い存在に感じられる「人間」だけど、だからこそ感情豊かでバラエティに富んでいて「人間らしい」。そしてそれはギリシャ神話に出てくる神々に通じる。同じベルイマン作品の『夏の夜は三たび微笑む』でも、複雑に入り組んだ男女の人間関係がとても人間らしかったです。

 

 

ベルイマンはそんな人間らしさにこそ『神』が存在していたと考えていたと感じました。そしてそれが面白いと思っていた気がします。

BBCドラマ『London Spy』の感想<ネタバレなし>

映画ではありませんが、BBCのドラマ『London Spy』の感想です。

 

2015年に放送されたシリーズで、現在1シーズン、5話が公開されています。

 

主人公は同性愛者のダニー(写真右)で、彼を中心にいろいろな出来事が巻き起こるミステリー系のドラマです。LGBT要素満載です。

 

f:id:motoko1077:20160601120734p:plain

 

 

脚本はトム・ロブ・スミス。イギリス人の小説家で、また自身もゲイでもあるようです。

 

Tom Rob Smith - Wikipedia, the free encyclopedia

 

監督はベルギー人で、『ザ・フォール』や『ハウスオブカーズ』を手がけたことのある方のようです。

 

Jakob Verbruggen - Wikipedia

 

 

タイトルに「スパイ」とあるので、ミッションインポッシブルみたいなドタバタ系のスパイ作品を想像してしまうところですが、実際はかなりしっとりしています。同じくBBC製作の『シャーロック』をもう少し薄暗くした感じです。アクションシーンはあまり無いですね。

 

 

もちろん舞台はロンドンで、登場するのもほぼイギリス人、またイギリス英語です。

 

映像センスが素晴らしく、その辺の映画よりも映像が素晴らしいです。またピントとか構図とかカメラワークにセンスがあります。

 

音楽と演出も、しっとりしてて都会的で、大人っぽい世界観です。

 

小説家が脚本を書いただけあって、ミステリー作品といってもいいストーリーになっています。一話で提示される謎を徐々に解いていくタイプのドラマです。

 

 

主人公ダニーの相手は、エドワード・ホルクロフト演じるアレックスです。(上記写真左)エドワード・ホルクロフトはチャーリー役で『キングスマン』にも出演していますね。

 

このアレックスがイケメンすぎます。彫りが深くて背が高くて足が長くて品があって、最早完璧と言っても言い過ぎではないでしょう。

 

エドワード・ホルクロフトを見るだけでも価値がありますね。それに加え映像・音楽・ストーリーがハイセンスなので言うことなしです。

 

 

あと、当然のようにLGBT要素がある点も素晴らしいです。

 

よく日本では「男は〜」とか「女は〜」とか性別で物の考え方とか恋愛観とかを規定するじゃないですか。テレビやインターネットにそういう情報は多いし、そういうことを実際に話題にする人も多いです。個人的にはそういう杓子定規に当てはめた考え方って苦手なんです。だって「個人による」としか言いようが無いし。

 

 

LGBTって伝統的に固定観念化されてきた男女の役割分担を破壊する能力を持っていると思うんですよ。今まで恋愛観で「男はこう、女はこう」って言われてきたものを根本から覆すわけですから。

 

LGBTの方々は何も社会のために恋愛しているわけでは無いと思うので、こう思うこと自体がお門違いかもしれませんが、それでもそういう新しい考え方が徐々に社会に浸透するのはいいことだと思います。

 

『London Spy』オススメのドラマです。